大判例

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福島地方裁判所 昭和41年(わ)74号 判決

本店所在地

福島県いわき市常磐関船町上関八一番地

名称

株式会社 渡辺組

代表者氏名

渡辺弘

本籍・住所

福島県いわき市常磐湯本町栄田二一番地

職業

会社役員(株式会社渡辺組取締役)

氏名

渡辺毅

年令

五六才(大正五年九月四日生)

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき当裁判所は検察官内田満出席のうえ審理をして次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社渡辺組を罰金二五〇万円に、同渡辺毅取締役三戸に処する。

被告人渡辺毅に対しこの裁判が確定した日から一年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社渡辺組(以下被告会社という)は、福島県いわき市常磐関船町上関八一番地に本店を置き、土木建築工事請負等を目的とする資本金一、四〇〇万円の株式会社であり、被告人渡辺組は、昭和三三年四月一日から同七年一一月九日まで右会社の代表取締役としてその業務全般を統括していた者であるが、被告人渡辺毅は、被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもって、同会社のその当時の取締役萩野浩と意を相通じて、完成工事原価の架空計上、完成工事高の一部除外等の不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ

第一、昭和三七年四月一日から同三八年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が七七一万三、七九一円で、これに対する法人税額が二八三万一、二〇〇円であったにかかわらず、昭和三八年五月三〇日所轄平税務署長に対し、所得金額が一五八万三、九五六円で、これに対する法人税額が五二万二、六〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額二三〇万八、六〇〇円をほ脱し

第二、昭和三八年四月一日から同三九年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二、三六三万九、二九七円で、これに対する法人税額が八六七万四、六七〇円であったのにかかわらず、昭和三九年五月二九日所轄平税務署長に対し、所得金額が一、一六八万三八七円で、これに対する法人税額が四一三万二一〇〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額四五四万二、五七〇円をほ脱し

第三、昭和三九年四月一日から同四〇年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が二、二五三万六、八一三円で、これに対する法人税額が八一六万四、七七〇円であったのにかかわらず、昭和四〇年五月三一日所轄平税務署長に対し、所得金額が一、〇一八万二、八三六円で、これに対する法人税額が三四七万三、六五〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって被告会社の右事業年度の正規の法人税額との差額四六九万一、一二〇円をほ脱し

たものである。

〔なお、右各所得の内容は別紙一、二、三の各修正損益計算書のとおりであり、各税額の計算は別紙四、五、六の各税額計算書のとおりである(別紙三の修正損益計算書の支出の部、公表金額中当期純利益金「一、〇一八万二、八三四円」は、確定申告書「昭和四一年押第三六号の三」によれば「一、〇一八万二、八三六円」であるけれども、これは、同申告書を作成するにあたり被告人らが損益計算をした時、一般管理書の計算において「二円」すくなく誤算したため、営業利益ひいては所得金額の計算に各「二円」ずつの誤差を生じた結果によるもので、計算上、当期純利益金は正しくは「一、〇一八万二、八三四円」であることが、右の確定申告書の記載自体から認められるので、ただ前記判示事実第三における申告所得金額は、被告人の申告したとおりに認定すべきであるから「一、〇一八万二、八三六円」とした(別紙六の税額計算書における所得金額書の申告額も同じ)が、別紙三の修正損益計算書で、本判決において認定した税額計算の内訳の説明をするにあたっては、計算上正しい「一、〇一八万二、八三四円」とした)〕。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、第一回公判調書中被告人の供述部分

一、被告人の検察官に対する各供述調書

一、被告人の収税官吏に対する各質問てん末書

一、被告人の各上申書

一、被告人と渡辺保子連名の上申書

一、株式会社渡辺組の登記簿謄本二通(昭和四一年二月二一日付、同四七年一一月二七日付)

一、証人萩野浩の当公判廷における供述

一、萩野浩の検察官に対する各供述調書

一、萩野浩の収税官吏に対する各質問てん末書

一、萩野浩の各上申書

一、第七、第八、第一〇ないし第一二回公判調書中証人萩野浩の各供述部分

一、猪狩武彦の検察官に対する供述調書

一、猪狩武彦の収税官吏に対する各質問てん末書

一、猪狩武彦の各上申書

一、佐藤喜雄の検察官に対する供述調書

一、渡辺保子の収税官吏に対する質問てん末書

一、第一三回公判調書中証人渡辺保子、同中野信夫の各供述部分

一、第四ないし第六回公判調書中証人辺見率二の供述部分

一、斉藤等の上申書

一、証人斎藤等に対する当裁判所の各尋問調書

一、第二二回公判調書中証人斎藤等の供述部分

一、銀行調査書

一、押収してある常磐銀行湯本支店備付普通預金元帳(正写)一冊、(昭和四一年 第三六号の六二)、同実印使用控一冊(同号の七八)、同当座小切手帳一冊(同号の七九)、同出金伝票綴一綴(同号の九六)、同試算控綴一綴(同号の九九)、同印鑑使用控簿一冊(同号の一〇)、同現金巡回日誌と題する帳面一冊(同号の一〇八)

判示第一の事実につき

一、押収してある法人税確定申告書(昭和三七年度)一綴(昭和四一年押第三六号の一)、同社長仮払帳(昭和三七年度)一冊(同号の四)、同伝票綴二問(同号の二八、二九)、同昭和三七年度現金出納帳一冊(同号の四一の一)、同昭和三七年度銀行元帳一冊(同号の四二)、同昭和三七年四月伝票綴一冊(同号の四四)、同昭和三七年八月伝票綴一冊(同号の四五)、同昭和三七年九月伝票綴一冊(同号の四六)、同福島 建設業協会石城支部備付昭和三七年度現金出納帳(正写)一冊(同号の六三)、同工事台帳昭和三六年度一冊(同号の六九)、同工事台帳昭和三七年度一冊(同号の七〇)、同総勘定元帳昭和三七年度一冊(同号の七四)、同昭和三六年五月分伝票綴一冊(同号の七七)、同工事台帳内訳(昭和三七年度)一冊(同号の八二)、同社長仮払伝票綴(昭和三七年度)一冊(同号の八六)、同昭和三八年一月伝票綴一冊(同号の八九)、同昭和三七年度所得税源泉徴収簿一冊(同号の九〇)、同三七年一〇月度振替伝票綴一冊(同号の一〇五)、同連絡簿と題する綴面一冊(同号の一〇六)

一、修正申告書謄本(自昭和三七年四月一日至昭和三八年三月三一日事業年度分)

一、調書依頼回答書(常磐銀行湯本支店)(昭和四三年五月二七日付、同年一〇月二九日付)

一、長岡義聰、福島保各作成の証と題する書面

判示第二の事実につき

一、押収してある法人税確定申告書(昭和三八年度)一冊(昭和四一年押第三六号の二)、同社長仮払票一冊(同号の五)、同現金出納帳(B)一冊(同号の六)、同昭和三九年二月、三月各現金支払伝票綴二冊(同号の三〇、三一)同昭和三八年度預金出納帳一冊(同号の四一の二)、同昭和三八年六月、七月、九月、一〇月、一一月各現金支払伝票綴五冊(同号の四七ないし五一)、同昭和三八年四月現金支払伝票綴一冊(同号の五八)、同昭和三八年社長仮払伝票綴一冊(同号の五九)、同福島県建設業協会石城支部備付昭和三八年度現金出納帳(正写)一冊(同号の六四)、同山城証券(株)備付現金出納帳(正写)一冊(同号の六六)、同小口現金出納帳昭和三八年度一冊(同号の六七)、同工事台帳昭和三八年度一冊(同号の七一)、同総勘定元帳昭和三八年度一冊(同号の七五)、同預金出納帳一冊(同号の八一)、同工事台帳内訳(昭和三八年度No.1)一冊(同号の八三)、同工事台帳内訳(昭和三八年度No.2)一冊(同号の八四)、同社長仮払伝票帳(昭和三八年度)一冊(同号の八七)、同昭和三八年八月現金支払伝票綴一冊(同号の八八)、同昭和三八年度所得税源泉徴収簿一冊(同号の九一)家計当座帳)一冊(同号の九四の一)、同メモ帳(ノート)三冊(同号の九四の二ないし四)、同メモ(七枚)一冊(同号の九五の一)、同念書・昭和三九年三月二九日付馬目清子名義一枚(同号の九七の二)、同領収書・昭和三九年三月三一日付馬目清子外一名の一枚(同号の九八)、同入金伝票綴(昭和三八年四月~同三九年三月)一綴(同号の一〇〇)、同入金伝票綴(昭和三八年~同三九年)一綴(同号の一〇二)、同出入金伝票票一綴(同号の一〇三)、同純利益と題する帳面一冊(同号の一〇六)、同帳面)黒い布表紙のもの)一冊(同号の一〇七)

一、修正申告書謄本(自昭和三八年四月一日至昭和三九年三月三一日事業年度分)

一、佐藤芳衛の収税官吏に対する質問てん末書

一、北川昭五郎、阿部義一、比佐孝祐、坂本政直答作成の証と題する書面

一、平土木事務所長の証明書

判示第三の事実につき

一、押収してある法人税確定申告書(昭和三九年度)一冊(昭和四一年押第三六号の三)、同現金出納帳(B)一冊(同号の六)、同現金出納帳(社長仮払控)一冊(同号の七)、同昭和四〇年度工事台帳(B)工事一冊(同号の八)、同入出金伝票集計表一冊(同号の一三)、同昭和三九年四月、五月、七月各現金支払伝票第三冊(同号の三二ないし三四)、同昭和三九年九月伝票綴一冊(同号の三五)、同昭和三九年一二月現金支払伝票一冊(同号の三六)、同昭和四〇年二月分伝票 (現金)一冊(同号の三七)、同昭和四〇年三月分現金伝票綴一冊(同号の三八)、同社長仮払伝票綴一冊(同号の三九)、同昭和三九年八月現金支払伝票綴一冊(同号の四〇)、同昭和三九年度現金出納帳一冊(同号の三)、同昭和三九年度銀行元帳一冊(同号の四三)、同昭和三九年六月現金支払伝票綴一冊(同号の五二)、同昭和三九年一〇月伝票綴一冊(同号の五三)、同昭和三九年一一月現金支払伝票綴一冊(同号の五四)、同昭和四〇年一月分現金伝票綴一冊(同号の五五)、同昭和四〇年四月現金払伝票綴一冊(同号の五六)、同福島県建築業協会石塚支部書付昭和三九年度現金出納帳(正写)一冊(同号の六五)、同 城証券(株)備付現金出納帳(正写)一冊(同号の六六)、同小口現金出納帳昭和三九年度一冊(同号の六八)、同工事台帳昭和三九年度二冊(同号の七二、七三)、同総勘定元帳昭和三九年度一冊(同号の七六)、同工事台帳内訳(昭和三九年度No.2一冊(同号の八五)、同昭和三九年度所得税源泉徴収綴一冊(同号の九二)、同昭和四〇年一月以降社員給料支払表一綴(同号の九三)、同メモ帳(家計当座帳)一冊(同号の九四の一)、同メモ帳(メート)三冊(同号の九四の二ないし四)、同メモ(七枚)一綴(同号の九五)、同入金伝票綴(昭和三九年四月~同四〇年三月)一綴(同号の一〇一)、同入金伝票綴(昭和三八年~同三九年)一綴(同号の一〇二)、同出入金伝票綴一冊(同号の一〇三)、同帳面(黒い布表紙のもの)一冊(同号の一〇七)、同昭和三九年度実質予算書綴一綴(同号の一一〇)

一、修正申告書謄本(自昭和三九年四月一日至昭和四〇年三月三一日事業年度分)

一、服部林之助作成の証と題する書面

法令の適用

法律に照らすに、被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法附則第一九条により改正前の法人税法(昭和二二年法律第二八号)第四八条第一項、第五一条第一項に該当するところ、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内において、又被告人渡辺毅の判示各所為は、いずれも法人税法附則第一九条により改正前の法人税法(昭和二二年法律第二八号)第四八条第一項、刑法第六〇条に該当するから、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情重いと認める判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において、主文第一種掲記のとおり量刑処断し、被告人渡辺毅については刑法第二五条第一項を適用して、この裁判が確定した日から一年間その刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 関口亮 裁判官 草野安次 裁判官佐藤道雄は東京地方裁判所裁判官の職務代行中のため署名押印することができない。裁判長裁判官 関口亮)

右は謄本である。

昭和四八年二月一九日

同庁

裁判所書記官 亘理正篤

別紙1

修正損益計算書

自 昭和37年4月1日

至 昭和38年3月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

自 昭和38年4月1日

至 昭和39年3月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

自 昭和39年4月1日

至 昭和40年3月31日

〈省略〉

〈省略〉

別紙4

税額計算書(1)

自 昭和37年4月1日

至 昭和38年3月31日

〈省略〉

別紙5

税額計算書(2)

自 昭和38年4月1日

至 昭和39年3月31日

〈省略〉

別紙6

税額計算書(3)

自 昭和39年4月1日

至 昭和40年3月31日

〈省略〉

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